[創作について] 韓国のWEB小説家が作品を作る方法 (3) - ルエルと田中
はじめに
前回は世界観について設定した。今回はキャラの設定を深めていく。ただその前に、設定について話しておきたいことがある。簡単に言えば「設定に執着するな」ということかな。
1. 設定について
今まで設定についてしか話してない私がこんなことを言うと、矛盾に聞こえるかもしれない。
でも私が言いたいのはあくまで「設定に執着するな」ということで、「設定を気にするな」ではない。何の設定もなしに書こうとしたら、そりゃ当然「今日は起きて歯磨きしてご飯を食べました」みたいな内容しか書けない。
ただ、設定を作る行為は結構楽しい。人にもよるし内容にもよるけど、本文を書く行為は大抵そこまで楽しくないので、初心者はずっと設定だけを作ってしまいがち。もちろんただの趣味なら個人の自由だし何の問題もないけど、売りたい作品や読んでほしい作品なら気をつけた方がいい。
そもそも設定が詳しすぎると創作の幅も狭くなる。例えば「山田はロリ以外を女の子として見てない」という設定があるとしよう。この設定だけでは、それが要らない設定かどうかはわからない。あとで必要になる設定かもしれないから。
でも書いているうちにストーリー上「山田がロリじゃない女性を好きになる」という展開が必要になるかもしれない。でもすでに「山田はロリ以外を女の子として見てない」という設定があったらどうなるか。その展開は使えなくなる。「ロリ以外を女の子として見てない山田」が「ロリじゃない女性を好きになる」のはおかしいから。実際に使うかどうかもわからない設定のせいで、展開の幅が狭くなってしまうわけだ。場合によっては「ロリじゃない女性を好きになる過程」が熱い展開になるかもしれないけど、最初からそれをわざわざ制限しておく必要はない。
だから個人的に、設定は必要最低限だけ作ればいいと思う。私も普段は「主人公+ヒロイン+目標」が決まったらそのまま本文を書き始めることが多い。ここまで詳しく設定を考えたのは、私も初めてかもしれない。もちろん「絶対に最初から設定を詳しく考えるな」という話じゃないし、むしろそっちの方が合ってる人もいる。ただ初心者はそれを自分で判断できないし、設定作りが楽しすぎて設定だけに執着しがち。
つまり私が言いたいのは「自分がどっち側の人間か判断がつくまでは気をつけろよ」ということ。ちなみにここで設定を詳しく作ってるのはあくまで説明のため。普段は最初からここまで詳しくは考えない。前置きがちょっと長すぎたな。そろそろ本題に入ろう。
2. ルエルというキャラ
前回は世界観について話した。そして「ライトセーバーを持ったロリがスチームパンクみたいな世界観で生きていく話」だということが確定した。さらに、そのロリの体には「現代人の成人男性が憑依してる」こと、「ロリの名前はルエルで、現代人の名前は田中」で、「舞台はゲームの中」だということも決まった。あらすじは大体こんな感じ。
でもみんなも思ってるんじゃないかな。これだけ見ると「で?結局何すんの?どうやって元の世界に帰るの?」という疑問が浮かぶ。それに前回話した「ルエルって完璧すぎじゃね?」とか「全部殴って解決すればいいんじゃ?」という疑問もある。これらはルエルというキャラの魅力を考えれば答えが出る。その魅力から「今すぐやるべきこと」や「そのキャラに足りない何か」が生まれることもあるから。
前回話した通り、ルエルはこの世界観でライトセーバーを使うことにかけては世界一といってもいいほどの天才ロリだ。そこで私は考えてみた。「周りから天才ってちやほやされてるリアル天才貴族ロリ」ってどんな性格してるんだろう。少なくとも私は「学校とかでも友達を見下してたりして、めっちゃ性格悪そうじゃね?」と思った。しかもゲームの世界だから、「序盤で主人公をバカにしてたけど、ボコボコにされてわからされるメスガキ」みたいなイメージも浮かぶかもしれない。
めっちゃ固定観念だし、ただの私の性癖みたいに見えるかもしれない。でも最初に言った通り、創作は自分の欲望に素直に従うべき。私はルエルが元々そういう系のキャラだったことにしたい。そしてそのルエルの体に入ってるのは、現代から来た成人男性の田中。ここで面白い展開が思いつく。ゲームのストーリー展開上、田中がメスガキを演じなきゃいけなくなるとか。でもそれだとギャグ寄りの作品になるし、私はギャグ寄りの作品があんまり得意じゃないので却下する。
その次に思い浮かんだのは、「だったら場合によっては周りからめっちゃ憎まれてるんじゃね?」ということと、「ゲームだったら序盤の1章あたりで主人公にボコボコにされる役っぽくね?」ということだった。つまりルエルは私の作品では主人公だけど、作中のゲームでは主人公じゃないってこと。ややこしいので、まず田中が入ったゲームの名前を考えてみた。思いついたのは「アルカディアオンライン」。正直そんなに重要じゃないし、適当につけた。
3. ルエルの状況
ここで改めて整理してみよう。田中は「アルカディアオンライン」のロリキャラ「ルエル」の体の中に入ってしまった。でも「ルエル」は私の勝手なイメージだけど「アルカディアオンライン」の主人公には見えない。つまり「ルエルの中に入った田中」は私の作品の主人公だけど、「アルカディアオンライン」には他に主人公がいる状況。
ここで欲しいのは「元の世界に帰る」という大きな目標の手前に置ける、今すぐ取り組める小さな目標。それを作る一番手っ取り早い方法が、ルエルを「序盤で主人公にやられる役」にすることだと思った。もちろんこれは私の勝手なイメージで、ルエルのイメージにも合ってるからそうしたいというのもある。なのでアルカディアオンラインでも、ルエルは実際にそういうキャラだったことにしよう。
じゃあルエルはどんな状況に置かれているのか? 異世界に着くやいなや、主人公にボコボコにされるかもしれない状況に置かれる。田中がアルカディアオンラインのヘビーゲーマーなら当然それを知ってるはずだから、元の世界に帰る方法を考えるどころじゃなくなる。主人公にボコボコにされて死ぬかもしれないからな。これで前に話した「最終目標」とは別に「小さな目標」が生まれる。最終的には元の世界に帰ることを目指すけど、今すぐはまず生き残ることを考えなきゃいけない。
これで読者から見てもルエルがどんな状況で、今すぐ何をするべきなのか理解しやすくなり、物語に集中しやすい。まず生存が第一の目標になるから。最初から世界観について講義するのはナンセンスで、世界観はその生存する過程で自然に理解させればいい。でもまだ「ルエルって完璧すぎじゃね?」とか「全部殴って解決すればいいんじゃ?」という疑問が残ってる。ルエルの魅力についても、まだ正直あやふやかもしれない。次はそれについて語ってみよう。
4. 完璧なキャラ
まず「完璧なキャラ」について考えてみよう。「完璧なキャラ」とは何か。シンプルに考えれば、「頭がめっちゃいい」とか「力がめっちゃ強い」とか、とにかくチート級の能力を持ってるキャラだろう。例えばワンパンマンのサイタマとか、転スラのリムルとか。他にも多いけど、私が今すぐ思い出せるのはこれぐらい。
こういうキャラはめっちゃ強いし、かっこいいからつい作りたくなる。でも作家として使うのは結構難しい。読者からは、どんな状況でも「殴って解決すれば?」って思われがちだから。それに納得できないと展開が不自然に感じられてしまう。かといって本当に全部殴って解決すると、「どうせまた適当に殴って解決するだろ」と読者に思われてしまう。つまり簡単すぎる解決も問題だけど、強いからこそ簡単じゃない解決を作るのが難しい。
解決方法は色々ある。ワンパンマンは「サイタマ以外にも魅力的なキャラを見せる」「そういう力を持ってることを周りは知らない」「展開とストーリーで爽快感を与える」「ハゲという弱点を作る(?)」といった形でそれを解決して、人気作になったんだと思う。
例えば「周りは知らない」という部分。サイタマが強いのは最初からわかってるから、「勝てるかどうか」の緊張感はほぼない。その代わりに「この強さが周りにどう見られるのか」「いつバレるのか」が見どころになる。つまり「勝てるか」という問いを「どう評価されるか」という問いに置き換えてるわけ。「殴って解決」自体はするけど、その後に何が起こるかで読者を引っ張れる。でも結局は「面白ければOK」って話で、それが一番難しい。そこで私が考えたのは「戦闘力が強すぎるなら、他に弱点を作る」ということだった。
田中はアルカディアオンラインのヘビーゲーマーで、アルカディアオンラインに詳しくて、戦闘力も強くて、家柄もカンストしてる天才ロリになってる。でも逆にこう考えられないだろうか。「田中が知ってることは全て真実なのか?」ということ。ゲームはゲームであって、その世界の解説本じゃない。そもそもゲームには、その世界を魅力的に見せるための内容しか入ってないはず。
でもそれが現実になった以上、そうはいかない。田中が知らないその世界の真実があるかもしれない。例えばルエルは一見ただのメスガキに見えるけど、実は裏で世界を救うために何かやってたかもしれない。ルエルの一族がライトセーバーを作ったというのは常識だけど、実は他の一族が開発した技術を盗んだだけかもしれない。それでその一族から恨まれてるとか。
ちょっと複雑な言い方をしたけど、私が言いたいのは簡単に言えば、「アルカディアオンラインに関する知識」は田中の強みであると同時に弱点にもなりうる、ということ。しかもこの弱点は新しく足した設定じゃなくて、「憑依」と「ゲームの世界」という、すでにある設定から自然に出てきたものだ。こういう形で弱点が作れると、設定を無駄に増やさなくて済む。
そしてその弱点を自分では解決できなくて、周りのキャラに助けを求めるとか。そういう関係を自然に作れる背景として私が思いつくのは、アカデミーのような学校や学園。他のキャラと仲良くなりやすいし、同時に憎まれやすいかもしれない。
それにルエルは戦闘能力が最強かもしれないけど、田中がそれをそのまま使いこなせるとは限らない。ルエルは敵を作りやすい性格をしてるので、何かしようとしても周りからめっちゃ牽制されるかもしれないし。これでどうしても1人では解決できなくて、仲間の力を借りる展開だって作れるはず。こんな風に、戦闘能力は最強でも1人では色々難しくなる状況を作れば、逆にルエルが活躍する場面がめっちゃ熱くなる。これならいくら完璧なキャラでも「殴って解決すれば?」とは思いにくい。
おわりに
今回はルエルというキャラについてもっと深く考えてみた。これで結構面白そうな作品になったんじゃないだろうか。簡単に言えば「みんなから嫌われる天才ロリになった現代人が、アーケインパンクの世界観でライトセーバーを使って戦い、生き残って家に帰るために努力する物語」になる。
正直こうして見るとそこまで差別化はできてないかもしれない。一つ一つ分解して考えたら、どれもどこでも見られるような内容だったりするかもね。てか私自身、どこでも見たことのないような作品を作れる人間ではないと思ってる。でもそういうどこにでもある要素を組み合わせることで、あんまり見たことのない作品が生まれると思ってる。
アカデミーが舞台の作品、アーケインパンクの作品、ロリが出てくる作品、ロリになる作品、ロリが天才な作品、異世界で家に帰ろうとする作品、ライトセーバーみたいなものが出てくる作品。これらは確かに多いかもしれない。ただそれが全部同時に出てくる作品は、少なくとも私はあんまり見た記憶がない。ここに他のキャラやストーリーが加われば、なおさら見たことのない展開と作品になれる。
そもそも、ありふれた作品を書くことも悪いことじゃない。クリシェになった展開には、クリシェになった理由がある。長い間多くの人から愛されてきたからクリシェになったわけだ。もちろんありふれた内容ばっかり書くのもよくない。どこにでもあるような内容は、逆に言えばわざわざその作品を読む理由がなくなるということだから。
だから大事なのは、なんでクリシェになったのかを理解した上で、新しい要素を足すこと。それを理解しないまま「見たことのない要素」だけに執着してると、「その要素を誰も使おうとしなかった理由」すら見えなくなる。
ちょっと極端な例を出すと、「自分の腕を切ってミキサーで粉々にして凍らせてアイスにして、空を飛びながらみんなに配る」内容は、少なくとも私はどこでも見たことがないけど、別に見たいとも思わない。少数の好みには合うかもしれないけど、大人数が見たがる内容じゃない。
それを書くのは個人の自由だけど、書いたあとに「なんで誰も読んでくれないんだ!」って思うのはちょっと違う。「誰も読まなくても気にしない」か、「そんな内容でもみんなに読まれる作品にする」か、先に覚悟を決めておく必要がある。ただ私が言いたいのは、後者を選んだとしても基本的な理解がないと難しいということ。
今回はここまでにしておこう。作品自体よりも、その他の説明が多かった気もする。でもどうしても重要だと思うことだったので、ちゃんと説明しておきたかった。次回は簡単なプロットとプロローグの作成について書いて終わりにしようと思う。その次からは企画とはまた違う話になるし、私は日本語で書いてるとはいえネイティブじゃないので、日本語の文章の書き方については何とも言えない。そもそも私は韓国語でも、文章力で評価されてるわけじゃないと思うし。